はじめに
前回、Part 1（準備編）では、American Board of Clinical Neurophysiology (ABCN) について、受験資格と受験料について、試験対策についてお伝えしました。今回は試験当日とその後の流れについてお伝えします。
受験の実際
一般臨床神経生理の試験を受けるために、自宅から車で40分ほどかかるPrometricのテストセンターまで赴きました。そこはデスクトップPCが数多く並んだ視聴覚室のような会場で、ABCNの試験以外にも多種多様なCBTを提供しており、多くの受験者で溢れていました。受付で、ABCNの試験を受けに来たことを伝えると、ロッカーの鍵を渡されました。室内には運転免許証などの身分証とメモ代わりのホワイトボード・マーカー以外は持ち込めないため、その他の私物はロッカーに預ける必要がありました。その後、厳重なボディチェックがあり、袖口や足元まで調べられました。係員の案内により着席した後は、画面上でCBTに関するインストラクションを受けます。問題にフラグを付ける機能や、消去法を行うために選択肢に取り消し線を引く機能があることに加え、電卓機能までついていることを知ったときには、難解な計算問題が出題されることが思い浮かび、嫌な予感しかしませんでした。しかし、もはや後には引けないので、席に備え付けのイヤーマフを装着し覚悟を決めて、試験開始ボタンを押しました。
全て四者択一で130問（一部連問あり）、制限時間は2時間半でした。あくまで個人的な見解ですが、3割がセルフアセスメントとほぼ同じ問題、3割がセルフアセスメントを改変した問題、残りが新出といった印象でした。案の定、電卓が必要な計算問題がいくつかあり、その中でも特に難しかったのは同相信号除去比に関する問題でした。正解を導く計算式すら作れなかったのですが、一番大きい数字が正解だろうという勘が働き、それに従いました。他にも考え込む問題が多く、時間ギリギリまで精一杯の努力をしましたが、手応えは厳しく、途中で頭が真っ白になったのをよく覚えています。
そのため、かなりの落胆と共に試験室を出ました。ロッカーから私物を取り出し駐車場へ向かいましたが、ちょうど車に戻ったタイミングでABCNから一通のメールが届きました。受験完了確認のお知らせメールかと思い開いたところ、内容はPreliminary scoreがpassであったことを伝えるものでした。あの時の驚きと喜びは決して忘れられません。
翌日以降は2週間後に予約したてんかんモニタリングの試験に備え、テキストとセルフアセスメントの中から出題されそうな項目を再確認しました。てんかんモニタリングの試験も全て四者択一で100問、制限時間は2時間でした。発作間欠時脳波、発作時脳波の波形を見て答える問題に加え、発作ビデオを見て発作型や側方徴候に関して答える問題が10問以上はあったかと思います。幸いなことに試験の手応えはかなりあり、自信を持って試験を終えることができました。前回同様、会場を出た直後にPreliminary scoreがpassであったことを伝えるメールを確認し、喜びとともに家路につきました。約2ヶ月後に正式なスコアと合格通知メールが届き、その約1ヶ月後に認定証が自宅へ送られてきました。なお、このときの試験は、一般臨床神経生理は71%、てんかんモニタリングは73%の正答率が合格ボーダーラインでした。それに対して自分の点数は、一般臨床神経生理が80%以上、てんかんモニタリングが90%以上の正答率であり、試験の手応えなりの結果でした。因みに認定医資格は10年間有効で、更新のためには5年毎に45単位のContinuing Medical Education (CME) creditを貯める必要があります。オンライン講習や国際学会出席などで地道に貯めようと思います。
感想
留学の機会を通じて受験資格を得られたこと、無事に合格できたこと、指導者や家族に支えてもらえたことに感謝致します。日本の医師免許のみでも受験可能な国際資格が存在することをより多くの方に知って頂きたいと思いますし、将来的にはこのような認定制度が、国内学会の認定制度と連携したり、脳波検査・判読時の加算に繋がったりすることを願います。

American Board of Clinical Neurophysiology受験体験記 Part 2（本番編）

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