片頭痛治療におけるCGRP関連抗体薬の使用は比較的安全で有効であるが、病院での投与には頻回（4週に1回）の通院が必要となり、患者負担が大きいことが課題である。在宅自己注射によって通院負担の軽減が期待されているが、在宅での実施にまつわる不安もあり、遠隔医療という選択肢が不安軽減に役立つ可能性がある。
本研究では、26名の片頭痛患者に対し、遠隔医療の実施前後のアンケート調査と実施後にインタビューを行った。実施前のアンケートでは36％が通院負担を感じ、87％が可能であれば通院頻度を減らしたいと考えていた。病院受診のために要する時間は平均して158分（移動101分、診察待ち37分、診察8分、薬局の待ち時間12分）であったが、遠隔医療では平均31分（移動時間0分、診察待ち16分、診察7分）まで短縮された。一方、自己注射については16％が不安を感じ、その理由として39％が注射後のトラブル、36％が注射器具の取り扱い、29％が薬剤の保管を挙げたが、実施後は92％が問題なく自己注射を実施できたと回答した。
遠隔医療の課題として、処方箋が届くまでの時間が長くなる等のデメリットがみられた。医療側は診療報酬の減少や検査を行う機会が減ることによって収入が減り、遠隔医療の説明などの負担が増加していた。回答者の58％は遠隔医療が自己注射に役立ち、65％が遠隔医療を継続したいと回答した。参加者の多くが遠隔医療の継続を希望しており、上記の課題が解決されれば、片頭痛患者の患者満足度向上に繋がると考えられた。
Neurology and Clinical Neuroscience, April 2024
<a href="https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/ncn3.12815?af=R">https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/ncn3.12815?af=R</a>
short summary：
片頭痛患者におけるCGRP関連抗体薬の在宅自己注射と遠隔医療を組み合わせることが患者満足度向上に繋がるかを検証するため、4つの施設で26名の片頭痛患者にアンケート調査とインタビューを行った。調査の結果、58％は遠隔医療が自己注射に役立ち、65％がこの組み合わせを継続したいと回答した。受診に要する平均時間は158分から31分に、中央値は86分から18分に短縮された。さらに受診負担軽減（46％）、スケジュール調整の簡便さ（35％）、不安軽減（19％）などのメリットがみられた。医療スタッフの負担や診療報酬の低さなど、遠隔医療に伴う課題が残るが、CGRP関連抗体薬の在宅自己注射と遠隔医療の組み合わせは片頭痛患者の満足度向上に有効な手段といえる。

CGRP関連抗体薬の在宅自己注射と遠隔医療の組み合わせの有効性の検討

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